2019年5月7日のワールドビジネスサテライトで、「2018年の年間騰落率1位のファンド ”東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープン”」の話題がありました。
国内株の投資信託ファンドの2018年1月から12月までの1年間の騰落率は、アメリカの利上げや、米中通商摩擦などによる日経平均株価の急落などもあり、2位以下は、マイナスとなっていましたが、1位となった東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンだけは、5.76%のプラスとなり、好成績を残して、格付け投資情報センターのR&Iファンド大賞2019最優秀ファンド賞を受賞したそうです。
2018年の年間騰落率上位ファンド(国内株投信)
1位 東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープン:東京海上アセットマネジメント 5.76%
東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープン | 東京海上アセットマネジメント株式会社
2位 イオングループ・ファンド:岡三アセットマネジメント -1.35%
イオングループ・ファンド|ファンド情報|岡三アセットマネジメント
3位 厳選ジャパン:AMOne -1.60%
厳選ジャパン|ファンド情報|アセットマネジメントOne
4位 企業価値成長小型株ファンド:AMOne -2.90%
企業価値成長小型株ファンド(眼力)|ファンド情報|アセットマネジメントOne
5位 スパークス・厳選投資ファンド(野村SMA/EW向け):スパークス -3.01%
スパークス・厳選投資ファンド(野村SMA・EW向け) | SPARX Asset Management
東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンを運用する東京海上アセットマネジメント株式会社のファンドマネージャーの北原淳平さんは、2013年の運用開始以来、責任者を務めていて、このファンドの運用額は、約330億円との事です。
北原淳平さんによると、リーマンショックや、中国とアメリカの貿易問題がありましたが、この様な様々な外部環境を乗り越えて、成長し続けられる企業は、オーナー企業が多いそうです。
このファンドは、経営者が会社の株式を5%以上持つ「オーナー企業」に限り投資をしていて、数年おきに社長が変わることが多いサラリーマン経営者の企業の株は、保有していません。
代表的なオーナー企業は、孫正義さんが率いるソフトバンクグループや、柳井さんが率いるファーストリテイリングですが、大塚家具や、大戸屋などの様に、オーナー企業はお家騒動に揺れる事もあり、一般的なオーナー企業は、日本ではネガティブに受け止められる事が多いですが、実際には、オーナー自身が株主のため、株主目線で、長期にわたり株主の利益を最大化する経営が可能になるそうで、更に、迅速な意思決定が出来る事も利点だそうです。
一般的なファンドは、市場環境や為替相場などの外部要因を分析し、今後業績が伸びる企業を選別することが多いですが、東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンは、外部環境の変化をあまり重視していないそうで、北原淳平さんご自身も、外部環境を当てる能力はないと考えているので、外部環境を予想するのではなく、外部環境に対応でき、実行力のある経営者を選別する事に力を注いだ方が、リターンが上がるとの事です。
■東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンの主の投資先(2019年3月現在)
1位 ZOZO 比率6.7%
(株)ZOZO【3092】:株式/株価 – Yahoo!ファイナンス
2位 アダストリア 比率6.75%
(株)アダストリア【2685】:株式/株価 – Yahoo!ファイナンス
3位 ファイバーゲート 比率6.4%
(株)ファイバーゲート【9450】:株式/株価 – Yahoo!ファイナンス
4位 ウェルビー 比率6.2%
ウェルビー(株)【6556】:株式/株価 – Yahoo!ファイナンス
5位 ディスコ 比率6.1%
(株)ディスコ【6146】:株式/株価 – Yahoo!ファイナンス
東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンの上位5位の主の投資先は、全てオーナー企業で、最も投資しているが、前澤社長の率いるZOZOへの約22億円で、2019年2月から買い始めたそうですが、ZOZOは、2018年12月に一律で値下げするキャンペーンのZOZOARIGATOが、加盟店から不評を買い、”ZOZO離れ”につながりました。
その後、2019年4月にZOZOARIGATOキャンペーンを終了するなど、混乱が続きましたが、そのさなかに買ったそうです。つまり、短期的なリターンよりも、前澤社長の長期的な戦略に期待した為だそうです。
オーナー企業は、特に失敗した時の意思決定が早いと考えられ、ZOZOの場合は、数ヶ月しか経っていない段階で、自ら肝いりで始めたキャンペーンを、手のひらを返せたのは、オーナー企業の良い面が出たと考えられるそうです。
北原淳平さんが、去年最も成功したのが、2007年に高齢者向け弁当配送サービスを開始した「シルバーライフ」で、「シルバーライフ」の特長は、週に3回工場から調理された料理が届く事で、店舗にあるのは炊飯器と鍋のみとなり、作業は、弁当に詰めるだけと言うシンプルさにこだわっているそうで、シルバーライフのフランチャイズオーナーにとっては、参入しやすい条件が揃い、全国671店舗まで拡大しているそうで、売上はここ5年で3倍となり、65億4,700万円まで拡大しているそうです。
シルバーライフの株価も、2017年10月に上場して以来、約2倍となっていますが、北原淳平さんは、シルバーライフに、上場以来投資をしていて、シルバーライフ社長の清水貴久社長に直接会い、「何かアクシデントがあって、社長を辞めなければならなくなったらどうするか」という質問をぶつけていました。
尚、清水貴久社長の答えは、「今のこの業界、この事業では、私以上に事業を伸ばせる人はいないと、自負しているので、自信を持って頑張っていきたい」と述べていましたが、北原淳平さんは、「私がいないと、この会社は立ち行かなくなる」という回答をする企業の方が好きで、そういう企業に投資したいと話していました。
北原淳平さんは、弁当業界の事については、ほとんど理解してないそうで、業界に精通するより、その業界で活躍できるオーナー経営者を見つけることに、注力しているそうです。
格付投資情報センターのチーフアナリストの岡忠志さんによると、株価の上昇局面だと、どの銘柄を買っても上がるので、どの企業が良いか、なかなか真価はわかりにくいですが、株価の急落局面で、いかにうまく運用できるかで、そのファンドの真価がわかると話していました。
コメンテーターの高田創さんによると、2018年の累積騰落率は、国内投信704本の平均が、-18.02%で、日経平均株価は、-12.08%、TOPIXは、-17.80%で、投資信託は、プロがやっているので、本来は日経平均株価や、TOPIXなどのインデックスよりも、パフォーマンスが、上回まらなければいけないのですが、2018年は、インデックスのパフォーマンスを上回れなかったそうです。
コメンテーターの山川龍雄さんの話では、個人で大量に株を保有している人は、覚悟が違うとの事で、オーナー経営者は、修羅場になった時に、決断が早く、失敗した時の止血が早い事が強みで、駄目だと思った時には、軌道修正する事が早いのですが、この様な行為は、サラリーマン経営者は、自分の代の成績を良くしたいので、何か膿を出す事はしない為、軌道修正する事が難しい様です。