2018年11月15日の日経モーニングプラスで、野村證券の高田 将成さんが、下記の内容について話されていました。
日経平均株価の急落は、2月にもありましたが、記憶に新しいのは、10月の急落で、日経平均株価は、リーマンショック直後の2008年10月以来10年ぶりの大きさで、一ヶ月で2,199円下落しました。
市場参加者の中には、中長期間での投資を行う方もいますが、短期の投資期間で動く方もいて、ヘッジファンドと呼ばれる方々は、主に短期の投資期間で動く投資家だそうです。
ただ、ヘッジファンドの戦略は、多種多様で、主に2つのグループに分かれているとの事です。
■システム系ファンド(アルゴリズム・プレーヤー)
●CTA(商品投資顧問)の推定運用資産規模は、約35兆円で、相場のトレンドに追随するファンド
●リスクパリティ・ファンドの推定運用資産規模は、約70兆円で、相場のボラティリティの変化で動くファンド
●クオンツ運用ファンド+スーマートベータ型ETFの推定運用資産規模は、約130兆円で、ファクター投資(相場のパターン)を重視するファンド
■裁量系ファンド(相場観主体の投資家)
●グローバルマクロ・ファンドの推定運用資産規模は、約20兆円で、マクロのファンダメンタルズを重視するファンド
●株式ロング・ショート・ファンドの推定運用資産規模は、約90兆円で、ミクロのファンダメンタルズを重視するファンド
この10月の急落局面では、株式ロング・ショート・ファンドが基本的には動いていたと言われているそうで、この中には、世界最大のヘッジファンドのブリッジウォーターなども入っているそうです。
10月の株価急落のスタートになったのは、アメリカの10年金利の上昇で、その直前に、株式ロング・ショート・ファンド等が、ハイテク銘柄を買いで積み上げていたそうで、金利の上昇で、債権との比較で、株価の割高感が意識されて、持ち高を減らす動きが、一斉に広がった様です。
この株式ロング・ショート・ファンドは、買いと売りを組み合わせて行っているそうですが、金利上昇前までは、ハイテク銘柄は、割高感があったので、売りで攻めていたそうですが、売っても売っても、株価が下がらない為、損をしてしまうので、ハイテク銘柄にも買いを入れていたとの事です。
そして、金利の上昇で、株式ロング・ショート・ファンドの売りが加速した時点では、コンピューターを使った売買を行うシステム系ファンドのCTA(商品投資顧問)や、リスクパリティ・ファンドなどが、その売りに追随して、世界的な売りにつながったそうです。
日本株に対しては、CTA(商品投資顧問)の日経225先物の持ち高を見ると、10月まで買っていたポジションを一気に落として、CTA(商品投資顧問)が、日本株を売るので株が下がり、株価が下がるので、CTA(商品投資顧問)は、更に売りを追加していたとの事です。
しかし、日経平均株価は、2万1,000円前後では、跳ね返されていましたが、10月は、この2万1,000円が一つの節目になっていた様で、2万1,000円近辺では、CTA(商品投資顧問)のポジション精算に伴う売り圧力が減っていた事や、株価に割安感が出たので、裁量系と呼ばれる様な、逆張りプレーヤーが、買いに参加したと考えられるそうです。
今後、日経平均株価が上昇するかは、株式ロング・ショート・ファンド等が、買いを入れてくるかが重要だそうですが、野村證券では、裁量系などの市場の心理状態を掴む為に、計算しているセンチメントがあるそうで、現状の市場のセンチメントは、リスク回避的になっているそうで、米中貿易問題などで、まだ市場のセンチメントが冷え込んでいる様です。
しかし、1月位からは緩やかに回復している状況で、今現在は、ゼロから、ややマイナスになっているそうで、最近の株安は、コンピューター売買を行っているシステム系ファンドなどの演出があり、過剰に反応した部分もあるので、今後は、悪材料を織り込み、市場心理が緩やかに持ち直す過程においては、再び割安感から、グローバルマクロや、裁量系の株式ロング・ショート・ファンドなどが、買いはじめて、最終的には、CTA(商品投資顧問)や、リスクパリティ・ファンドなども、買いで追随してくる展開になると、考えても良いそうです。
年内に株価が、上昇に転じるかどうかは、米中貿易摩擦の動向にかかってくるそうで、戻るとなると、10月の急落があったので、戻りも早いと想定されるそうです。